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田川氏が建設・設備の世界に入ったのは、父親の影響が大きかったといいます。「父が設備業を営んでいたので、自然と同じような道を選びました」と振り返ります。高校卒業後は建築関係の専門課程に進学。その後、群馬の設備工事会社に就職し、約10年間、現場で腕を磨きました。
さらにそこから、空調メーカー直営の販売会社へと転職。メーカーが直接施工を担う「メーカー施工」のスタイルで、20年以上にわたって現場経験を蓄積しました。「群馬での10年で基礎を作り、メーカー系での仕事で施工品質の基準を身体に染み込ませた」という流れが、今の有限会社雅の原点になっています。
中小建設業にとって「独立前にどれだけ現場経験を積んだか」は、会社の土台を左右します。田川氏の場合、20年超のキャリアを経て独立しているだけに、その技術的な裏づけは確かなものといえるでしょう。
数ある同業者の中で有限会社雅が選ばれる最大の理由として、田川氏が挙げるのは「メーカー施工基準に基づいた施工クオリティ」です。「メーカーの施工基準を知っているから、他の業者が手を抜きやすいポイントも細かく見ることができる」と語ります。
一般の電気工事会社がなかなか徹底できない細部まで、メーカー基準を守り続ける姿勢。これは、長年メーカー系で培った経験から来るものです。また、ハウスメーカーの仕事を多く手がけているため、各社の施工基準にも精通しており、「穴あけ施工時の防水・防気処理なども、大手ハウスメーカーが求める水準を守るようにしている」とのことです。
仕事の依頼経路は、家庭用エアコン工事では約7割がハウスメーカーから、残り3割が地元工務店・電気店から。業務用エアコンでは、ネット経由でエアコンを販売する会社の施工店として稼働するルートが主力のひとつになっています。品質への信頼が、地元の元請けや広域ネット販売会社からの指名につながっているといえます。
また、若い人材の育成にも丁寧に取り組んでいます。現在は24歳と28歳の2名が現場に携わっており、「将来的に一人でエアコンを取り付けられるように、丁寧に指導しています」と田川氏。厳しく叱るのではなく、丁寧に教えるというスタイルを大切にしています。
中小建設業が今もっとも頭を悩ませている課題のひとつが、資材不足と価格高騰です。田川氏は「エアコン本体よりも、工事用の部材――冷媒管やカバーといったものが本当に手に入らなくなってきている」と現状を話します。特に、2027年に迫るフロン規制(いわゆる「2027年問題」)に向けた需要増が重なり、部材の奪い合いに近い状況も生まれつつあるとのことです。
この状況を受けて、田川氏は事業の軸足を少しずつ変えています。従来は家庭用エアコン中心だった売上構成を、業務用エアコンの比率を高める方向に動かしており、「業務用は単価も高く、入れ替え需要が安定している」と見込んでいます。また、笠間市の福祉課と連携して高齢者宅へアプローチする取り組みも進行中。風呂釜洗浄を切り口にした、給湯器・トイレ・エアコンの交換案件へとつなげる「ツーステップ型」の営業手法を実践しています。
人材面でも、即戦力不足という課題を正直に認めつつ、「若い二人をしっかり育てながら、自分は見積もりや営業のフォローアップに集中できる体制を作っていきたい」と話します。中小建設業にとって「育てながら回す」この難しさをよく分かった上で、現実的な手を打ち続けています。
田川氏には、独立当初から頭の中にある「中長期の計画」があります。「5年後には従業員を最低5人に、10年後には10人体制にしたい」という目標です。そのために、空調だけでなく給湯器関連の事業拡大にもすでに動き出しており、「種まきはもう始めている」と力強く語ります。
営業面では、現場技術を持つ若手二人が現場を担当できるようになれば、自分は営業や見積もり対応に専念できる。さらに、50代のベテラン営業職を近い将来迎え入れることも視野に入れています。「その人が来てくれれば、売上構成も大きく変わってくると思っている」と期待を込めます。
地域との関係では、笠間市の福祉課と連携した取り組みが象徴的です。高齢者が多く、子どもたちが都市部に出てしまっている茨城の農村部において、「困りごとを気軽に頼める存在」になることが、地域貢献と事業成長の両立につながるという考え方が根底にあります。
「品質を落とさず、地域のお客様に誠実に向き合い続ける」。シンプルですが、その軸をぶれさせないことが、有限会社雅が次の10年に向けて着実に歩んでいる理由ではないでしょうか。
| 会社名 | 有限会社雅 |
| 代表者 | 田川 智之 |
| 所在地 | 茨城県笠間市旭町381-20 |
| 設立 | 2023年10月1日 |
| 事業内容 | 住宅設備工事(エアコン工事・給湯器交換・電気工事 など) |
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取材を通じて感じたのは、田川社長の「品質への一切の妥協しない」姿勢の確かさでした。安売り競争に乗らず、メーカー基準を守り抜く。その信念が地元・笠間の工務店やハウスメーカーからの信頼を支えているのだと実感しました。