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みなさんの現場では、インフラの点検作業をどのように担っていますか?
国土交通省 九州地方整備局と国立研究開発法人 土木研究所が令和8年5月18日に発表したプレスリリースによると、大雨時に家屋等を洪水から守る排水機場(ポンプ場)の年1回の点検には、10人以上の技術者が現地にて作業しているのが現状です。
少子高齢化が進むなか、このままでは**「今後10年程度で現行の施設管理水準を維持できなくなる」**という深刻な懸念が現実のものとなりつつあります。これは排水機場だけの話ではありません。橋梁・トンネル・道路・各種設備と、土木インフラ全般にわたって、点検を担う技術者の不足は業界全体の課題です。
中小の建設会社や専門工事会社にとっても、「ベテランが現場を支えてきたが次の世代が育っていない」「有資格者が足りず点検案件を断るしかなかった」という声は珍しくないでしょう。この問題に対して、行政が本格的に動き始めました。🤖
九州地方整備局と土木研究所は、令和8年5月28日に熊本河川国道事務所が管轄する内田川排水機場(熊本市南区)で、四足歩行ロボットを使った点検業務の社会実装を公開予定です。
注目すべきは、これが「河川分野において人間とロボットが一つのチームとしてインフラ点検を行なう、国内初の取り組み」という点です。単なる実証実験のステージを超え、実際の業務として導入される段階に入ったことを意味します。
活用されるのは、米国ボストン・ダイナミクス社の四足歩行ロボット「Spot(スポット)」。名前を聞いたことがある方もいるかもしれません。このロボットには次のような機能が搭載されています。
🔍 30倍光学ズームカメラ:遠くの計器も鮮明に読み取り
🌡️ 赤外線(IR)カメラ:設備の異常温度を自動検知
🔊 集音マイク:異音の検知
📍 LiDAR+2次元バーコード:GPSが届かない屋内でも正確な位置把握と自動巡回を実現
これらの機能を組み合わせることで、ポンプ設備の計器読み取り・異音検知・異常温度の検知という主要な点検作業を、ロボットが自律的に実施できます。
※画像はイメージです
九州地方整備局と土木研究所は、土木研究所での実証試験を重ねた結果、排水機場点検業務の約3割がロボットで代替可能としています。
これをもとに、10年後を目標に点検作業の約3割をフィジカルAIで自動化する計画を掲げています。
ここで出てくる「フィジカルAI」という言葉、初めて聞いた方もいるかもしれません。プレスリリースの参考資料では、次のように説明されています。
「これまでのAIはネット上でしか活動できない。フィジカルAI=現実世界で"動くAI"。AI+機械の体で、現実世界での作業が可能」
つまり、画像認識・音声解析・温度判断といったAIの知性を、ロボットという「体」と組み合わせることで、実際の現場作業を代替できるようにしたものがフィジカルAIです。
九州地方整備局は令和3年4月にインフラDX推進室を設置し、災害対応やデジタル技術を活用した新たな取り組みを進めてきました。今回の社会実装はその集大成的な一歩といえます。
※ 出典:国土交通省 九州地方整備局ウェブサイト(https://www.qsr.mlit.go.jp/content/000001789.pdf)
もちろん、課題がないわけではありません。プレスリリースでは「機体の高コスト化」「通信環境の整備」が明記されています。現時点では大企業・行政機関向けの導入コストがかかるのが実情です。
しかし、過去のドローンや各種計測機器の価格推移を見れば、技術の普及に伴ってコストが下がるのは自然な流れです。今後は生成AIとの組み合わせによる高度な状況判断や、安価な人型ロボットの活用も視野に入れているとされており、**「人間とロボットが協働する新しい働き方」**の実現に向けた動きは加速しています。
中小の建設・設備管理会社にとっての現実的なアクションは、今すぐロボットを導入することではなく、こうした技術の動向をウォッチし続けることです。特に発注機関や官公庁との取引がある会社は、点検・維持管理業務のDX対応が今後の入札要件や評価基準に影響する可能性があります。IT活用や新技術への理解を深めておくことが、数年後の競争力に直結します。💡
今回の事例を踏まえて、中小の建設・専門工事会社が実践できることをまとめます。
① 業界のDX動向を定期的にウォッチする
国土交通省・各地方整備局の記者発表は無料で公開されています。九州地方整備局のインフラDX推進室の取り組みのように、点検・管理業務に直接関わる技術情報が随時発信されています。自社のビジネスに関連するものはブックマークしておきましょう。
② 点検・巡回業務の「見える化」を今から進める
ロボットが代替しやすいのは「定型・反復・計測」の作業です。自社の点検業務のどの部分がこれに当たるか棚卸しし、将来の自動化・外注化・省人化の余地を把握しておくだけでも準備になります。
③ 技術者不足への備えを経営課題として位置づける
今回の取り組みの背景にあるのは、まさに「点検を担う技術者の不足」です。採用・育成だけでなく、DXによる省人化・業務効率化も含めた複合的な対応が、今後の建設業経営では不可欠になります。
国土交通省 九州地方整備局と土木研究所が令和8年5月28日に公開予定の排水機場へのフィジカルAI社会実装は、建設・土木業界の技術者不足問題に対する行政の本気の回答です。「10年後に3割をロボットで」というのは、裏を返せば「今から対策しないと3割の人手がなくなる」という警告でもあります。業界全体の変化の波を、経営判断の材料として早めにキャッチしておきましょう。
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出典:ロボットと人間がともに働く社会の構築に向けて〜ロボット・AIで市民の安全を守る〜(国土交通省 九州地方整備局・国立研究開発法人 土木研究所)https://www.qsr.mlit.go.jp/content/000001789.pdf をもとに作成
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「建設円陣PLUS編集部」は、建設業界に特化したプラットフォーム「建設円陣」を運営する株式会社エンジョイワークスの編集チームです。中小建設業の経営・人材・現場課題を、国土交通省・厚生労働省、業界専門紙や公的機関の情報をもとに解説します。