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橋本代表が鉄工の世界と無縁ではなかったのは、幼少期から父親が現場で仕事に向き合う姿を間近で見ていたからだ。父親が長年この業界に携わっており、いつか一緒にやれればという思いは、気づけば自然と芽生えていた。
ただ、学校を卒業してすぐに家業へ入ることはしなかった。「いきなりうちに入っても甘えが出るかなっていうのがあった」と橋本代表は語る。あえて畑違いの自動車製造会社に約3年勤め、社会人としての基礎を外の世界で叩き込んでから、家業である橋本鉄工へと合流した。
この「甘えを排した回り道」が、橋本代表の仕事への姿勢の根底にある。自分を律し、現場と真剣に向き合う姿勢は、外の世界で揉まれた経験があってこそ培われたものだ。中小建設業においても、後継者育成や若手の定着に課題を抱える企業は多い。橋本代表が自身の経験から示すのは、「まず外で鍛えよ」というひとつの答えである。
橋本鉄工の仕事の核は、鉄骨加工と製缶加工だ。全業務の約9割を鉄骨加工が占め、残りは製缶加工などが担う。仕事の受注は、数十年来のお付き合いがある元請け会社を軸に、地元の工務店や横のつながりを通じた紹介案件がスポット的に加わる形で成り立っている。
橋本代表が強みとして挙げるのが「品質への自信」と「一括請負による責任の明確さ」だ。「品質的なものに関しては自信を持ってお出しできている」と語るとともに、複数の会社が工程に入ることで不具合発生時に責任の所在が曖昧になるリスクを、橋本代表は身をもって理解している。「うちに聞いていただければ、自分のところで全部調べることができる。そういうメリットがある」と橋本代表は言い切る。
現在は長女が大学卒業を機に入社し、CAD業務を担当している。これまで外部委託していた作業を社内で担えるようになれば、コスト削減と技術の内製化が同時に実現できる。「全てを入れ込むように、今努力しているところ」と橋本代表は話す。規模は小さくとも、一棟の建物を仕上げるまでの責任を自社で抱える体制が、長年の信頼につながっている。
中小の鉄工会社が直面する課題は複数重なっている。橋本代表が特に実感しているのが、塗料の入手困難だ。鉄骨加工において仕上げ工程に欠かせない塗料だが、メーカー側がオーダーをストップしている状況が続いており、「受注しても、材料が入ってこない」と橋本代表は語る。製品はできても出荷できないという異常事態が、現在も続いている。
さらに、都内の再開発案件のしわ寄せも地方の中小に押し寄せている。「近場の大手さんが手薄になって、本来だったら我々がやりそうな仕事までやってしまう。仕方ない部分はあるが逆に我々の方は仕事量が減っていく」と橋本代表は率直に話す。人手不足については、現場で外国人労働者が急増しているのを肌で感じながら、以前受け入れていたベトナム人エンジニアのビザ更新が入管の判断で認められず、現在帰国中という事態も経験した。
こうした状況への対応として、橋本代表が打ち出しているのが「内製化」の推進だ。CADをはじめとした業務を社内で担うことで外注費を削減し、残るお金を増やして従業員への還元につなげる。倉庫や介護施設など、やりがいを感じられる物件を優先的に回してもらえるよう取引先と話し合うことも、今後の方針として見据えている。
橋本代表が考える理想の体制は、現在の10名規模だ。「今の体制でいければ、仕事量は増やすことが可能」と話しつつも、人が多すぎると長物加工の際にクレーンの取り合いが起きるなど、作業効率が下がることも経験から知っている。コンパクトな精鋭集団で、品質を担保しながら仕事を回す──それが橋本代表の描く姿だ。
今年入社した長女はCAD業務を担当しており、業務の内製化という意味での戦力として期待がかかる。後継者については現時点で明言はしていないが、「今から一から覚えるって感じで、ものになってくれればいい」と、長い目で人材を育てていく姿勢を崩さない。
業界全体への思いとして、橋本代表はこんな言葉を残した。「我々みたいな職人というのが、だんだん減っていっているのは実感している。でも、やればやっぱり満足感がある。一歩ちょっと踏み込んでやってみませんか、というふうには思いますよね」。自分の手で作ったものが実際に建物として立っている──その実感は、パソコンの前に座っているだけでは味わえない、職人だけが知る喜びだと橋本代表は語る。
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取材を通じて感じたのは、橋本代表の「品質と責任への一貫したこだわり」でした。不具合が出たときに自社だけで原因を追える、だから請け負う──その言葉に、規模の大小ではなく「責任を取れる体制」こそが信頼の源泉だという信念が滲みます。塗料不足や大手による仕事の取り込みなど逆風が続く中でも、内製化を着実に進め、10名という規模にこだわり続ける姿勢は、地に足のついた経営そのものでした。