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株式会社ForestWorkの渡辺代表は、もともと林業とはまったく縁のない業界にいた人物だ。最初の就職先は飲食業——全国にチェーン展開する企業に勤めていたが、店舗の閉店にともない、新宿の別店舗への転勤を告げられた。「群馬を離れるのは嫌だったので、そこでやめようと決めました」と渡辺代表は振り返る。
地元を離れたくないという、ごくシンプルな思いが転機をつくった。そのタイミングで声をかけてきたのが、林業に携わる知人だった。「一緒にやろうよという感じで誘ってもらって、じゃあやってみようと。深く考えずに飛び込みました」。料理から林業へ——一見すると180度異なるキャリアチェンジだが、渡辺代表に迷いはなかったという。
中学・高校時代は剣道に打ち込み、体を鍛えてきた。肉体労働への抵抗がなかったことも、スムーズな転身を支えた要因のひとつかもしれない。そして23歳からこの道に入り、気づけば15年が経過した。「最初は体力的にしんどかったですけど、木を倒した時のあの高揚感が忘れられなくて、そこからどんどんのめり込んでいきました」。林業の面白さは、やってみた人にしかわからない——渡辺代表の言葉が、それを物語っている。2020年に独立し、現在は従業員3名の少数精鋭で現場を回す。
同社がメインで手がける事業は、伐採と下刈り(かりばらい)だ。伐採は木を切り倒す作業全般を指し、下刈りは植林された苗木を育てるために周囲の草を刈る、林業ならではの管理作業である。なかでも渡辺代表が力を入れているのが「特殊伐採」だ。
特殊伐採とは、通常の伐採とは異なり、木に直接登りながら上部から少しずつ切り落としていく技術を要する作業だ。建物や電線が近くにあり、そのまま倒すことができない場所でも対応できるため、住宅街や個人宅からの依頼が増えている。「この作業が自分の中でいちばん面白くて、やっていて楽しいんですよ」と渡辺代表は笑顔で話す。
競合が多い中で、他社に負けない強みを問われると、渡辺代表は迷わずこう答えた。「作業後の仕上がりのクオリティですね。いくら切るのがうまくても、最後の完成度が低ければ意味がない。そこは絶対に負けないと思っています」。切って終わりではなく、後始末まで含めた丁寧な仕事ぶりが評価され、リピート依頼につながっているという。
現在の顧客は主に個人のエンドユーザーだ。紹介や口コミを起点にした信頼関係が仕事の基盤となっている。「知り合いからつながって依頼してもらうことが多いですね。そこはありがたいと思っています」。中小建設業における「地域密着の強み」を、まさに体現しているといえるだろう。
中小の林業・伐採業者が新規の仕事を獲得しようとするとき、地域特有の課題がある。渡辺代表が拠点を置く吾妻郡は、山が多く林業事業者も一定数存在する。木を切ってほしいという相談が発生しても、地域内の既存の人間関係やつながりによって、自然と仕事の流れが決まってしまうことがある。新参者がそこに割り込むのは容易ではなく、案件がなかなか自社まで届かないという経験も少なくないと渡辺代表は語る。
こうした課題への対策として渡辺代表が着目しているのが、SNSを活用した情報発信だ。インスタグラムでは施工実績の写真を定期的に投稿し、最近はTikTokへの参入も始めた。「広告にお金をかけることへの不安もありますが、今の時代、ネットを使わない選択肢はないと思っています」。
チラシをイベント会場に設置するアナログな集客も試みたが、成果は限られた。その経験からデジタルシフトの必要性を肌で感じているという。認知を広げ、見込み顧客との接点をつくる——中小建設業において普遍的なこの課題に、渡辺代表も真剣に向き合っている。
「5年後には、売上の8割を特殊伐採で占められるようにしたい」——渡辺代表のビジョンは明確だ。現在は伐採・下刈りを並行して請け負っているが、自身が最もやりがいを感じ、かつ市場にも需要がある特殊伐採へ事業を集中させていく考えだ。
エリア戦略についても具体的な絵を描いている。現在の拠点である吾妻郡にとどまらず、前橋市をはじめとする人口の多い近隣地域への展開を目指す。「一気にあちこちに広げると中途半端になる。まず足場を固めて、それから順番に広げていきたい」。車で40分圏内にある前橋市周辺は個人顧客も多く、特殊伐採の需要が見込めるエリアだ。
10年後を見据えると、「今の3名にさらに3名加えて、2チームで動けるようにしたい」という。自分が目の届く範囲でしっかりと面倒を見られるチームを作ること——それが渡辺代表の目指す経営スタイルだ。特殊伐採という専門技術に磨きをかけながら、誠実な仕上がりで信頼を積み上げていく。その歩みは、着実に前へと続いている。
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「建設円陣PLUS編集部」は、建設業界に特化したプラットフォーム「建設円陣」を運営する株式会社エンジョイワークスの編集チームです。中小建設業の経営・人材・現場課題を、国土交通省・厚生労働省、業界専門紙や公的機関の情報をもとに解説します。
取材を通じて印象的だったのは、渡辺代表の「仕上がりへのこだわり」でした。作業の技術だけでなく、最後の完成度まで妥協しないという姿勢が、信頼と口コミを生み出す原動力になっていると感じました。