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🔨 島根県雲南市を拠点に、測量・墨出し事業を手がける株式会社T&Cエンタープライズ。代表の鳥谷秀和代表は、19歳で職業訓練校から建設業の道に入り、設計・施工管理を経て独立。15年以上にわたる実績の中で、「あとの細かいことは任せる」と言われるほどの揺るぎない信頼を築き上げてきた。建設事業のかたわら、教育事業や地域の買い物支援にも積極的に取り組む鳥谷代表が、業界の課題と次世代への思いを語る。🏔️
鳥谷代表が建設業と出会ったのは、高校を卒業した19歳のときのことだ。「あまり頭のいい人間ではなかったんで」と笑いながら話す鳥谷代表だが、その言葉の裏には、自分の手で稼げる力を身につけようとした若き日の決意がある。母親から「手に職をつけなさい」と言われ、職業訓練校の測量・土木科に進んだのがきっかけだった。特に強い志望動機があったわけではなく、「母親に従っていったという感じ」と語る。
訓練校で測量技術を学んだのち、卒業と同時に測量士補の資格を取得。その後、地元の建設コンサルタント会社に就職し、土木設計からキャリアをスタートさせた。設計の仕事を一通り経験した後は、現場の施工管理にも携わり、一級土木施工管理技士の資格も取得。設計・測量・施工管理という建設業の三つの柱を実地で身につけた上で、独立の道を選んだ。
「おじいちゃんが土木の施工管理をやっていましたけど、現役ではなかったので憧れていたわけでもなく。ただ、そういう仕事があることは知っていた」という。土木との縁は、気づかないうちに血筋の中にもあったようだ。独立から15年以上にわたり、島根の土地とともに測量・墨出しの技術を磨き続けてきた。
株式会社T&Cエンタープライズの仕事依頼のほとんどは、建設コンサルタントや土木会社といった、創業当初からの長期取引先から来ている。その関係性は独立時から変わらず、15年以上にわたって継続されているという。
なぜそれほど長く選ばれ続けるのか。鳥谷代表が挙げる強みは、「コンサルの仕事も施工管理の仕事も自分自身がわかること」だ。設計側の意図を踏まえながら測量・墨出しを行えるため、元請け側が細かな指示を出さずとも現場が完結する。「基本的な説明を受けるだけで、期待に応えられる成果が上がるという自負はある」と語る鳥谷代表。その積み重ねが「あとの細かいことは任せる」という形の発注につながっており、これは15年かけて築き上げた信頼の証にほかならない。
また、働き方の面でも同社は際立っている。繁忙期であっても土曜・日曜は基本的に休みとし、天候や工期の都合でやむを得ず出勤した場合は振り替えを確保する。「測量の仕事で土曜日も休み、というのは比較的珍しいかもしれない」と鳥谷代表は言う。中小建設業にとって、こうした働き方の整備は採用面でも大きな競争力となる。
測量・墨出し事業の現場を担う人員は現在4名。受注量はある一方、人材が追いつかず、仕事を増やせないのが現実だ。「人がいないので、増やせないというのが正直なところ」と鳥谷代表は言う。求人については「うまくいっていない」と率直に認める。有料求人サービスへの投資に二の足を踏む背景には、周囲の経験談がある。「結局高いお金を払ったけど効果がない、外国人を入れてもうまくいかなかったという話をよく聞く。誰を信頼していいかわからない」というのが、鳥谷代表の本音だ。
測量士の求人倍率は今でも10倍前後で業界最高水準とされており、それはすなわち「それだけ人が足りない」ことの裏返しでもある。こうした状況は、島根に限らず地方の中小建設業全般に共通する構造的な問題でもある。
一方で、鳥谷代表は業界の変化について前向きに捉えている部分もある。「現場で働く人をリスペクトするような風潮になってきているかな」と語るように、ブルーカラーの仕事への社会的な評価が変わりつつあると感じているのだ。AIや先端技術が普及する中でも、人が動いてものをつくっていく現場仕事は代替されにくく、今後ますます価値を持つ分野になるという見方だ。単価も右肩上がりで推移しており、「徐々に上がってきているのは事実」とも言う。
現在49歳の鳥谷代表が、今最も強く描いているビジョンは「後継者の育成」だ。「60歳ぐらいまでに、いつでもバトンタッチできる状態にしておきたい」という言葉には、自分が築いてきた技術と信頼を次の世代に引き継ぎたいという切実な思いが込められている。今いるメンバーにはさらに成長してもらいたいと期待しつつ、「10年かけて育てるためには、早めに経験を積んでもらわないといけない」と考え、この1〜2年で採用に向けた取り組みを本格化させようとしている。
規模の拡大より、現場の質を守ることを優先したいというのも鳥谷代表らしい考え方だ。「中大企業まで持っていきたいというのはあまりなくて、とにかく現場を10名以下でしっかり回せればいい」と語る。現在の4名体制から7〜8名に増やせれば、受注できる仕事量も大きく変わる。それが、鳥谷代表が描く現実的かつ堅実な成長の姿だ。
求職者に向けては、こんなメッセージを送る。「現場の仕事はきついというイメージがまだあるかもしれないけど、これから先の社会を見据えたら、本当に価値のある業界・仕事になってくると思う。嫌わずに、好んで入ってきてほしい」。測量士の求人倍率が示すように、今まさに必要とされている仕事であり、長く社会から求められ続ける職種でもある。未経験でも、仕事に諦めずに意欲的に向き合える人であれば年齢を問わず受け入れたいという姿勢だ。
なお、同社の事業は建設にとどまらない。高校の寄宿舎運営を担う教育事業部では、生徒への食事提供や生活指導など人材育成・社会教育を手がけている。また、移動販売車「だんだん号」で雲南市内約270件を巡る買い物支援事業は、個人事業として12〜13年続く地域密着の取り組みだ。農業やまちづくりへの関与も含め、鳥谷代表は地域のインフラを多角的に支える存在として、島根の暮らしに深く根を張っている。
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📝 編集部コメント
取材を通じて印象的だったのは、「説明しなくても期待に応えられる自負がある」という鳥谷代表の静かな自信でした。設計・施工管理・測量という三つの現場を渡り歩いて身につけた技術と、15年の誠実な仕事が、元請けから「細かいことは任せる」という絶大な信頼を生んでいる。建設事業にとどまらず、高校の寄宿舎運営や地域の買い物支援にも携わる姿からは、地域で生き、地域を支えることへのゆるぎない信念が伝わってきました。後継者育成という次の課題に向き合いながら、鳥谷代表の挑戦はまだまだ続く。