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阪口氏が建設の世界に入ったのは17歳のころ。全日制の高校に進学したものの、学校生活はうまくいかず、1年生から2年生に進級できなかった。転校先として選んだのは、週3日の通学で単位取得できる高校。残りの3日間が空いてしまい、知り合いの先輩に声をかけられたのがきっかけだった。
「先輩が鉄骨の仕事をしていて、アルバイトに来てみいひんかって言われたのが始まりです」
鉄骨鳶の世界に飛び込み、高い鉄骨の上を歩く仕事に熱中した。当時は鉄骨鳶のほうが"かっこいい"とされ、阪口氏も足場の仕事には見向きもしなかったという。しかし独立後、鉄骨の仕事の競争が激化する中で、「プライドより生活」と割り切り、足場の仕事へと舵を切った。
「鉄骨しかやらないとか言ってても、仕事が減ってきたら話が違う。できることは何でもこなそう、っていうふうに変わっていきましたね」
その柔軟な転換が、今日のSCIの基盤となっている。2008年に独立してから約18年、現在は足場工事を主軸に、鉄骨工事も手がけている。
中小建設業にとって、取引先からの信頼を積み上げることは生命線だ。阪口氏は長年、紹介を通じて仕事を広げてきた。その背景にある評価について、こう話す。
「相手が予定を組みやすいように、まず持っていってあげるっていうやり方をしてます。自分のことは後回しというか」
依頼を受けた際、「こうなったら行ける、こうなったら行けない」とぐずぐず条件を並べるのではなく、できるだけ早くイエスかノーかを伝える。無理な場合は無理とはっきり言う。それだけのことだと阪口氏は言うが、取引先からすれば「あんまりグズグズ言われへん。融通が利く」と高く評価されている。
足場工事は現場の工程に直結する。足場の日程が決まらないと、後続の職人を入れられない。だからこそ、明快なレスポンスと柔軟な対応が信頼につながる。
また、鉄骨・溶接の技術を持つ阪口氏は、自分のスキルを活かした幅広い対応力も強みとしている。
京都の街を走れば、毎日どこかしらで足場材を積んだトラックを目にする。足場業者は多く、「誰でも組めるやん」と思われがちだ。しかし阪口氏はそれを否定する。
「トラックに乗って、置き場に帰って積み込みして、高いとこも登らなあかん。簡単な仕事じゃない」
それでも業者の数が多いぶん、仕事を取るために単価を下げる動きは後を絶たない。中小建設業にとって切実な問題だ。
「安くして仕事を取っても、利益が残らなかったら職人に良い給料が渡せない。そんなんで人がついてきますか」
阪口氏はきっぱりと言う。経験を積んできた職人が、安易な値下げ競争に加わる必要はない。むしろ、実力に見合った単価で、良い取引先とつながることが長期的な安定につながると考えている。
人材確保の難しさも正直に語る。以前は10人規模の時代もあったが、コロナ前後から徐々に人が減り、現在は13年来の従業員1名とともに現場に立つ。「お金で釣られてきた人は、お金で他に行ってしまう。苦しい時も一緒にいてくれる人が一番大事」──それが阪口氏の人材観だ。
また、建築基準法の改正により木造住宅の新築が建てにくくなったことや、京都特有の土地不足・物価高も取引に影響を与えており、外部環境の変化への対応が急務だと感じている。
阪口氏が今、目指しているのは「もう一度賑やかな会社」にすることだ。コロナ前は毎月食事会ができるほど人が集まっていた。それが徐々に縮小し、今は再スタートの気持ちで取り組んでいる。
「仕事をまず覚えるのは大事。でもそれ以上に、毎日ちゃんと来れて、当たり前のことを当たり前にできる職場を作りたい」
笑いながら仲間と働けること──それが阪口氏が若いころに初めて感じた"仕事の楽しさ"の原点だ。一人でひたすら怒られながら覚えた時期を経て、同世代の仲間と肩を並べて現場に立った時の感覚が忘れられない。その体験が、仲間を大切にする経営の軸になっている。
これから建設業に入る人へのメッセージも力強い。
「しんどい、汚いっていうイメージだけで敬遠するのはもったいない。まず一回やってみたら楽しさが分かる。仕事を任されて、思い通りの足場が組めるようになって、人に評価されたとき──そこに本当のやりがいがある」
足場一本に頼らず鉄骨の技術も活かしながら、良い取引先と信頼でつながり、賑やかな現場を取り戻す。阪口氏のチャレンジは、今まさに動き出している。
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「建設円陣PLUS編集部」は、建設業界に特化したプラットフォーム「建設円陣」を運営する株式会社エンジョイワークスの編集チームです。中小建設業の経営・人材・現場課題を、国土交通省・厚生労働省、業界専門紙や公的機関の情報をもとに解説します。
取材を通じて印象的だったのは、阪口代表の「相手の都合を優先する」という姿勢の一貫性でした。派手な差別化ではなく、誠実さとフットワークで信頼を積み上げてきたSCIの歩みは、中小建設業の経営者にとってもリアルな共感を呼ぶはずです。