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遠藤社長はもともと電気工事とは無縁の世界にいた。前職はテレビ通販会社での仕事。海外から商品を発掘して輸入・販売するコンサルタント的な役割を担い、2〜3年にわたって業務に携わっていた。
しかしテレビ通販業界は徐々に売上が落ち込み始め、「このまま続けるのは難しい」という転機が訪れる。そのタイミングでたまたま出会ったのが、LED照明を販売する大手メーカーとの縁だった。「LEDに切り替えるには電気工事が必要になります。その需要がどんどん増えていく中で、この業界で仕事をしてみようというきっかけがあったんですよね」と遠藤社長は振り返る。
もともと車が好きで、電気系統を自分でいじったりオーディオを取り付けたりすることを趣味にしていたという遠藤社長。その経験がベースにあったことで、LED電気工事の世界にも比較的すんなりと入っていくことができた。電気工事士の資格を取得し、同じくこの業界で働く仲間と組んで2010年9月に株式会社TMSを立ち上げた。「物ではなく、人と技術だけで勝負できる仕事」という考え方がスタートの原点だ。
創業後はコロナ禍の影響で一時的に事業を休止せざるを得ない時期もあったが、体制を立て直し、現在も江東区を中心に4名体制でLED工事専門業者として活動を続けている。中小建設業にとっても、こうした「ゼロからの転身」は決して珍しいことではない。遠藤社長の歩みは、専門特化の強みを身をもって示すものだ。
LED工事を専門に手がける業者は江東区内にも複数存在する。その中で株式会社TMSが選ばれている最大の理由について、遠藤社長はこう語る。「やっぱりお客さんに親しみを感じていただけることが大事だと思っています。低予算でも満足していただけるような仕事を提案できること、それが1番の強みだと自分では思っています」。
利益を追求するだけでなく、顧客の経済状況や予算に合わせてプランを立て、満足度の高い工事を届ける。利益が薄くなってでもお客様のために仕事をするケースも少なくないという。「そうやって頑張っていればまた次の仕事が来るかなという気持ちでやっています」という言葉には、長年の経験に裏打ちされた確かな信念が感じられる。
また、工事の品質そのものだけでなく、施工後の片付けや清掃にも徹底してこだわっている。既存の建物内で稼働中の施設のLED照明を更新する案件が多く、お客様が利用している中での工事となるため、作業中の配慮は当然のこと、終了後の養生・清掃にも目を光らせる。「工事はどの業者でもできる。でも終わった後の細かいところまで気を抜かないことが信頼につながる」という姿勢だ。
仕事の受注ルートは主に3つ。エンドユーザーと工事会社をつなぐマッチングサイト経由の案件、国の入札に参加する会社からの下請け、そしてマンション管理会社からのLED化・電気トラブル対応だ。一人親方との横のつながりも活かし、大型現場では協力体制を築いている。中小建設業ならではの柔軟なネットワーク活用がTMSの強みでもある。
中小建設業が共通して直面している課題の一つが「知名度の低さ」だ。遠藤社長もそこに難しさを感じている。「自社ホームページを作ってもネームバリューが全くない。大手と比べると、直接お客様から問い合わせを得るのはどうしても難しい」。ホームページからの受注はこれまで1〜2件程度にとどまっており、既存の取引先や紹介経路が仕事の軸になっているのが現状だ。
しかし一方で、大きな追い風も吹いている。2027年には国内での蛍光灯の製造・輸入が事実上終了することが決まっており、「2027年問題」として業界でも注目されている。LED化がまだ進んでいない施設や建物は全国にまだ数多く残っており、遠藤社長は「駆け込み需要を確実に取り込んでいきたい」と語る。
こうした状況を踏まえ、「ホームページを見たお客様に、この会社なら信頼できそうだと感じてもらえるよう、TMSの強みをもっと発信していく必要がある」という意識を高めている。これは中小建設業全体に共通する課題でもある。技術や人柄への信頼は現場で培われても、それをWeb上でどう伝えるかが集客の鍵になりつつある。自社の「こだわり」を言語化し、発信し続けることが小規模事業者にとって急務になっている時代だ。
「今はまだ小さい会社ですが、もっとボリュームのある仕事を増やしていきたい」。遠藤社長の言葉からは、現状に満足しない前向きな姿勢が伝わってくる。目指すのは、学校・工場・オフィスビルといった規模の大きい現場への参入だ。下請けとして大型案件を受けている会社と連携し、そこからしっかり仕事が取れる体制を整えていくことが今後の目標だという。
人材については、現在も一人親方の仲間と協力し合いながら現場を回しており、急いで増員する必要はないと考えている。それよりも、信頼できるパートナーネットワークを深めていくことを重視している。
「仕事を楽しくやること、それがやりがいにつながる」という遠藤社長の言葉は、長年お客様に寄り添い続けてきた経営者ならではの言葉だ。2027年のLED化需要を追い風に、着実に規模を拡大していく株式会社TMSの挑戦はこれからも続く。「どんな方法でも仕事を取れる割合があるなら試してみたい」という言葉通り、変化をいとわない姿勢が今後の成長を支える原動力になっていくだろう。中小建設業にとっても、同社の歩みは専門特化と誠実なものづくりの組み合わせがいかに強みになるかを教えてくれる好例だ。
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取材を通じて感じたのは、遠藤社長の「利益より先にお客様がいる」という一貫したスタンスでした。技術と人柄を武器に、LED専門業者として黙々と積み上げてきた14年。その実直さこそが、TMSの最大の強みだと感じました。