記事を読み込み中です

山根社長が電気工事に触れたのは、高校1年生のときだ。父親が電気工事に携わっており、中学生のころから父の車に積まれた工具を持ち出しては、自分でいじり回していたという。当初はプログラミングや電子系への関心もあったが、工業高校の授業でその方向性は変わった。
「C言語が思うようにいかなくて。そんな時期に、高校生ものづくりコンテストの電気工事部門に出たんです。うちの高校は長年入賞実績がなかったんですが、僕が県で4位を取った。寸法があと1〜2ミリずれていなければブッチ切りで1位だったんですよ。その悔しさから、電気工事でやっていこうと決めました」
高校生のころには、クラスの誰よりも速く配線作業をこなしていた。他の生徒が40〜50分かかる実技課題を、20〜25分で仕上げた。理由はシンプルで、入学前からすでに「道具の使い方」を知っていたからだ。スタートラインが、同世代とは根本的に違った。
卒業後は電工会社に就職し、工場の電工として5年間修業した。その後、いったん鉄工所に転職して溶接の仕事に就くが、そこでも電気工事の知識を買われ、工場内のクレーン修理を任されるようになる。「鉄工所でクレーンも直せるんだと気づいて、じゃあ電気、やっぱり自分でできるよなと思った。だったら自分でやってみっかという、本当にそれだけのきっかけでした」と山根社長は笑う。
25歳で完全独立。以来、売り上げは1,000万・2,000万・4,000万と、毎年ほぼ倍増のペースで成長を続けてきた。
株式会社山根電設の強みを聞くと、山根社長は間髪入れずに答えた。「365日24時間、基本的に対応しています」
中小建設業にとって、夜間・休日の緊急対応は本音では避けたいところだ。しかし株式会社山根電設が得意とする工場電気設備のメンテナンスは、ライン停止が即損失につながるため、スピード対応が絶対的な価値を持つ。「大体の業者は、夜間に呼ばれると時間がとか金がとか言い出す。でも僕は、まず行きますって言って動くんで、そこの差は大きいと思っています」
対応先には、東京ガス・東京電力・羽田空港・大手物流施設といった、通常の業者が入れない現場も含まれる。これらの取引は口コミと信頼の積み重ねで獲得したものだ。「建設業許可を取って大きな仕事を受けたいけれど、任せられる職人がいないという会社から、勝手に電話がかかってくるようになりました」と山根社長は言う。
また、チームを束ねるうえで社長が特に力を入れているのが、従業員のケアだ。長距離現場や長時間労働が続いたあとには、連続した休日を確保する。現場で出た余剰資材を売り、その利益を従業員に還元することもある。「人間が働く上で求めるのは、金と休みだと思っています。そこに応えれば、みんな本当に頑張ってくれる」というのが山根社長の持論だ。
現在のメンバーはほぼ全員が同世代の29歳前後。「今が一番の精鋭部隊」と言い切るほど、チームの質への自信は高い。
中小建設業が直面する最大の課題のひとつが人材不足だが、山根社長が強調するのは「数の不足より質の問題」だ。「経験年数を積んでいるだけで、実際の施工知識も段取り力もない人は結構いる。20年やってると言っても、大したことないなと思うことはよくあります」と率直に語る。
では、どんな人材を求めているのか。山根社長がこだわるのは、技術よりも「人間性」だという。若い人材はやる気があっても言うことを聞かない場合があり、経験豊富なベテランは山根社長より年上であるがゆえに上下関係が機能しないことがある。採用はほぼ紹介経由に絞っており、「人となりが分からない人は正社員としては雇わない」という方針だ。
一方、採用の仕組みそのものも課題とする。ハローワークに出した時期もあったが「まともな人が来なかった」として撤退。「採用したくてもしきれない。自分が警戒して、いいよと言い切れないことの方が多い」と悩みを明かした。
こうした採用の難しさは、山根社長ひとりの課題ではなく、多くの中小建設業が抱える構造的な問題でもある。人材が集まらなければ、せっかくの仕事を受けられない。建設業の「人手不足」は、実は「信頼できる人手不足」という問題でもある。
山根社長が独立当初から掲げてきた目標は、売り上げ10億円の会社をつくること。根拠は数字だ。「会社員時代に勤めた会社が、社員60人で10億円を出していた。実際に動いていたのは10数人だったから、1人あたり1億円という計算になる。自分の従業員が年間8,000万以上を稼げるようになって、10人以上のチームになれば、10億円は達成できると思っています」
ターゲットとする時期は、40歳まで。20年スパンで逆算し、10年で実現できれば理想という現実的な目線を持つ。世界情勢や物価高騰など外部環境の影響を受けながらも、コネクションは既に十分にある。「あとは人を増やして、積み重ねるだけ」という言葉には、根拠のある自信がにじむ。
また、目標は規模だけではない。従業員が自分と同等の技術とスキルを身につけ、それぞれが独立できるレベルまで育てることも、山根社長の描く未来像に含まれている。「金と休みを確保して、みんなで楽しく働ける環境をつくる。アットホームでいこうよと、メンバーみんなで話しています」
建設業の若き経営者として、上下関係で人を押さえつける旧来の文化から一歩踏み出し、メンバーが自分のスキルを発揮できる職場をつくる──その姿勢は、人材確保に悩む中小建設業にとって、ひとつの答えになるかもしれない。
【プロフィール】
会社名:株式会社山根電設
代表者名:山根 竜之介
所在地:栃木県宇都宮市東木代町813-3
主な事業:電気工事全般(高圧工事・新築・改修・工場設備など)
創業年:令和3年11月
従業員数:5名
建設円陣PLUSでは、建設業の経営者インタビューを無料で行っています。
掲載記事はそのまま採用・営業PRにもご活用いただけます。
▶ 取材のお申し込みはこちら
費用は一切かかりません | 取材時間の目安:約30分~1時間
本サイトについて、ご質問・ご相談がある場合は、下記のお問い合わせフォームからお気軽にお寄せください。
あわせて、協力会社探しや人材確保など、日常的な情報収集の場として無料で利用できる建設業向けマッチングサイト『建設円陣』もぜひご登録ください(緑のバナーをクリック)。
本サイトについて、ご質問・ご相談がある場合は、下記のお問い合わせフォームからお気軽にお寄せください。
「建設円陣PLUS編集部」は、建設業界に特化したプラットフォーム「建設円陣」を運営する株式会社エンジョイワークスの編集チームです。中小建設業の経営・人材・現場課題を、国土交通省・厚生労働省、業界専門紙や公的機関の情報をもとに解説します。
取材を通じて印象的だったのは、山根社長の「やってみっか」という一言に凝縮された行動の速さでした。語り口は率直でユーモアがあり、技術・経営・人材育成、すべてを自分の言葉で語れる29歳の姿に、建設業の次世代を感じました。