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大宅代表が設備業界に入ったきっかけは、華々しいものではなかった。「会社が家の近くにあったから、それだけですね」と本人は笑う。特別な志があったわけでも、業界に憧れていたわけでもない。ただ、その「近所の会社」への就職が、彼の人生を大きく変えることになった。
21歳で業界に入り、修業を積んで28歳で独立。以来、業務用エアコンの設置・施工一本で横浜市を中心に仕事を続けてきた。取り扱うのはほぼ業務用に限られており、商業施設や事務所ビルなどへの施工が主な仕事だ。「全くやらないわけじゃないですけど、ほぼほぼ業務用ですね」
設備工事は、キャリアを積み重ねるほどに仕事の幅が広がる職種でもある。大宅代表が独立してから今年で11期目。決して派手な業種ではないが、技術の積み重ねが確実に仕事につながっている。「最初は何となく入った業界でも、続けることで自分の武器になる」その生き様は、中小建設業にとっても「地道な技術の蓄積こそが経営安定の礎になる」ことを示すひとつの好例といえるだろう。
大翔設備の仕事の依頼は、独立以来ほぼ「もともと働いていた会社からの発注」と、「そのつながりからの紹介」で成り立っている。「仕事量は困っていないですね。人がいればもっとできるのに、という感じです」という言葉が、同社の技術力と信頼の高さを雄弁に語っている。
大宅代表が仕事をする上で最も大切にしていることは「長く使えるように施工する」ことだ。「エアコンは10年設計とよく言われますけど、それを超えてもちゃんと使えるようにって思いますね」丁寧な施工によって設計耐用年数を超えた稼働を実現することが、リピートや紹介につながっている。
また、働き方の面でも特徴がある。「残業はほとんどしないですね」と大宅代表は語る。年間残業10時間以内という水準は、設備業界の中では際立った環境といえる。施主への品質と、働く人への配慮。その両方を大切にする姿勢が、大翔設備らしさの根幹にある。
大翔設備がいま直面している最大の課題は、人材の確保だ。かつては代表含め5名体制で現場を回していたが、昨年を境に一気に人が減り、現在は代表一人での運営が続いている。「今の仕事を回すだけで精一杯」という言葉に、その苦しさがにじむ。
中小建設業・設備業では「一人のトラブルが組織全体に波及する」リスクが、この話でも浮き彫りになった。大宅代表は現在、採用に向けてLP(ランディングページ)の整備やSNSへの取り組みを始めるなど、できる範囲で前向きに動いている。「インスタをちょっと始めたぐらいですけど」と控えめながら、着実に発信の土台を作っている。
同業他社と同様、大翔設備でも協力会社との連携によって現場を乗り切っている現状がある。人員が少ないからこそ、外部との信頼関係が一層重要になる。「一人でやっていると、本当に人材の大切さを実感する」この切実な声は、業界全体が抱える構造的な問題の縮図でもある。同時に、大宅代表の姿勢からは「今できることを着実にやる」という経営者としての芯の強さも伝わってくる。
今後の目標について、大宅代表はこう語った。「自分が現場に出なくても会社が回るようにしたい。二人一組で動けるチームを複数持って、複数の現場を同時に回せるようにするのが理想です」。現場から経営へとシフトしていくための体制づくりが、10年先を見据えたビジョンの中心にある。
業界への入職を考える若者へのメッセージも印象的だった。「辛いと思われがちだけど、辛いのは朝と夏場だけかな」と笑いながらも、核心を突いた言葉を続ける。「今、AIで人の仕事がなくなるって言いますけど、うちらの仕事はなくならないと思いますよ。基本的に手仕事なんで」
AIが進化するほど、手仕事の価値は際立つ。「一回覚えてしまえば、もう一生使える技術ですから」という言葉は、設備職人として20年近くを歩んできた大宅代表の自信と誇りの表れだ。中小建設業にとっても、「AIに代替されない手仕事の担い手」をどう確保・育成するかは、これからの経営の核心的なテーマになってくるだろう。
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取材を通じて感じたのは、大宅代表の「丁寧な仕事が信頼をつくる」という一貫した姿勢でした。人材の波に翻弄されながらも、前を向き続ける姿が印象的でした。
「辛いのは朝と夏場だけ」という言葉は笑いを誘いながらも、この仕事への愛着と自信の裏返しだと感じました。設計耐用年数を超えても使えるよう丁寧に施工する、その積み重ねがリピートや紹介につながっている。華やかさはなくとも、技術と誠実さで10年間築いてきた信頼は本物です。「手仕事はAIに取って代わられない」という言葉には、これから業界を目指す若者へのエールと、職人としての誇りが込められていました。